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老人ホームでの生活で欠かすことのできない「食事」。
入居者様に毎日楽しく過ごしていただくためには、食事の満足度を高めることが必要です。しかし、施設運営の中で給食部門は赤字になりやすいという特徴もあります。
この記事では、実際に老人ホームで給食の運営方法を変更した経験のある管理栄養士が、給食の運営方法の違いや、メリット、デメリットなどについて紹介します。
また、給食を委託する際にはどのような給食委託会社を選ぶべきなのか、実体験も含めて解説していきます。
老人ホームの給食運営方法は、大きく分けて「直営給食」と「委託給食」に分けられます。
「直営給食」は、自社で採用したスタッフで給食を運営する方法で、「委託給食」は、給食委託会社などと契約を結び、給食運営をお願いする方法です。
この方法はどちらにもメリットデメリットがあるため、どちらの方法が向いているかは施設の特徴や、運営方針などによっても変わってきます。
また、適切な運営方法を選択することで、運営コスト削減や給食品質の向上を実現することができます。
実際に、この2つの運営方法のメリット、デメリットについて解説します。
直営給食は、自社のスタッフで運営を行うため食事内容や提供システムなどに柔軟に対応できるというメリットがあります。
一方、その分の人事管理や書類管理などのコストがかかるというデメリットもあります。
実際に、直営給食にはどのようなメリットやデメリットがあるのか細かく解説します。
「直営給食」のメリットとして、
といった点が挙げられます。
直営給食は、自施設で献立の作成、発注、調理、提供までをおこなうため、すべて施設側で給食運営を管理することができます。
そのため、献立の変更や提供プロセスの改善、給食費削減のためのさまざまな措置などを、すべて施設側でおこなうことができます。それにより、管理がしやすく柔軟な対応ができる点が大きなメリットです。
特に、材料費や輸送費が高騰している昨今、給食費の削減に苦慮している施設も多いです。直営給食であれば、すべての管理を施設側が行えるため、さまざまな方法で給食費削減にアプローチできます。
また、自施設で給食を作ることで、入居者様とのコミュニケーションツールとしても活用でき、施設生活の満足度UPなどにも繋がります。
「直営給食」のデメリットとしては、
といった点が挙げられます。
「直営給食」では、自施設でスタッフを採用し教育をおこなうため、人件費の負担や採用コスト、教育コストがかかる点が大きなデメリットです。他にも、普段使う食材の保管や消費期限の確認など、食材管理も意外と負担になることが多いです。
特に、喫食者の数が多く、提供食数が多い施設では負担も大きくなります。
また、食事の提供数が多い「大量調理施設」になると、「大量調理施設衛生管理マニュアル」に沿った食事の提供が必要になります。このマニュアルに準拠することで、衛生管理計画や様々な帳票の作成と管理という業務が増えるため、管理栄養士をはじめとした専門職の採用を検討しなければなりません。
そのため、部屋数の多い有料老人ホームなどで直営給食で徹底した運営をする場合には、専門知識を持つスタッフの確保が必要になります。
しかし、「大量調理施設」として定められるのは提供食数が多い特別養護老人ホームであることが多く、特養であれば管理栄養士の配置義務があるため大きな問題にはなりません。そのため、特養は比較的直営化しやすいともいえます。
「委託給食」は、「直営給食」とは異なり、管理にかかる人的、時間的コストが削減できるというメリットがあります。
一方で、給食委託会社と一緒に運営を行うため、「直営給食」よりも、運営体制を施設側で自由にコントロールしづらいというデメリットもあります。実際に「委託給食」を導入することでどのようなメリットデメリットがあるのでしょうか?
「委託給食」を導入することで、
といったメリットがあります。
「委託給食」は、献立の作成から発注、調理、提供、書類の管理まで契約内容によってはほぼすべての給食管理業務を委託できます。そのため、給食運営にかかるリソースやコストを削減できます。
特に、管理栄養士を配置していない施設では、この給食運営に関する知識をもった人間が施設側にいないことも多いため、委託する大きなメリットとなります。
また、給食委託会社のスタッフが業務に当たるため、採用や教育を施設側がおこなう必要がなく、給食の質が安定しているという点もメリットです。重ねて、給食会社は給食運営のノウハウを豊富に持っています。
喫食者の意見などを反映していくことで、「直営給食」に比べて細かい要望に対応できる可能性も高いです。
一方で、「委託給食」のデメリットとしては、
などが考えられます。
「委託給食」では、採用・教育などの業務も給食委託会社に委託しています。
そのため、施設側は人件費や給食費を削減するためのアプローチが難しく、「直営給食」よりも自由なコントロールが難しくなります。
また、給食委託会社は多数存在するため、選定が難しいというデメリットもあります。規模の大きい施設になればその分給食費も高くなるため、選定にはさまざまな点を考慮しなければなりません。
給食委託会社に依頼できることは、献立の作成から食事の提供まで幅広いです。実際に給食運営を委託する場合は、どのような業務を委託できるのでしょうか?
委託できる範囲は給食委託会社によって異なりますが、代表的なものを紹介していきます。
老人ホームでは、さまざまな種類の食事を一度に調理・提供します。
そのため、時間内に作業をおこなう作業状況の管理も重要になります。
給食委託会社は、給食作業工程表を作成し、タイムスケジュールを設定することで時間内に食事を提供してくれます。
また、食事の提供は調理終了から2時間以内とされているため、早く作っておけば良いわけではありません。老人ホームでは、衛生的な食事の提供のため、この時間内に入居者様が食事を口にできるような工程管理が求められます。
給食委託会社は、調理管理に対するノウハウも多数持っています。
給食の調理では、調理前の食材や加熱後の食品など、取り扱う食品を過程ごとに分けることが必要です。
そのため、調理の時間のみならず、衛生的な調理をおこなう調理管理も重要です。
病院などの大量調理施設では、徹底した衛生管理のためHACCPに基づいた衛生管理をおこなうよう定められています。
HACCPは、下処理、切込み、加熱、盛り付けなどの汚染が考えられる各工程で衛生的に調理ができていることをチェックするという考え方です。
食中毒を起こしてしまうのは、これらの衛生管理ができていなかったことが原因であることが多いです。
衛生管理のノウハウを持った給食委託会社にお願いすることで、こういったリスクを減らすことができます。
特に、富士産業は医療関連サービスマークの認定事業者なので、衛生管理のノウハウにも定評があります。
老人ホームで給食運営を委託する場合、入居者に楽しく安全に食事をしていただくことを念頭に置いて給食委託会社を選ぶことが重要になります。
そのためには、入居者や施設の特徴に合わせて柔軟な対応をしてくれる給食委託会社であることが絶対条件となります。
具体的には、どのようなポイントに注目して委託会社を選べば良いのでしょうか?
給食委託会社選びの最初のポイントは、メニューのバリエーションの豊富さです。
老人ホームの食事は、栄養バランスを整えるのと同じくらい、普段の生活の楽しみとして機能していることが重要になります。
そのため、イベント食や一風変わったメニューなど、メニューのバリエーションが豊富な給食委託会社であれば、入居者の満足度を向上させることができます。特に、施設内で生活されている入居者の方々にとって、食事は季節感を感じる数少ない方法の一つです。
頻繁にイベント食を実施できるような給食委託会社は、入居者からの評判も良くなる傾向にあります。
また、老人ホームに入居されている方は高齢であるため、喫食量が少ないことが珍しくありません。
そういった方が、少しでも経口摂取を続けて健康に長く生活するためには、食事の楽しみを演出することが重要であり、そのためにはメニューのバリエーションの豊富さに着目して給食委託会社を選ぶことが必要です。
2つ目のポイントは、食事の色彩や見た目などにこだわっているかです。
「施設の食事」というだけで美味しくない、見た目が悪いなどのイメージが先行している方もおられます。
たしかに、さまざまな疾患を持っている方が生活されている老人ホームでは、栄養価も考えられた食事が提供されているため、病院ほどではないにしろ味が薄い、美味しくないと感じる方がいるのも事実です。
しかし、食事を美味しいと感じるためには、味だけでなく色合いや見た目、匂いなどの要素も必要です。ただ栄養価が整った食事を提供するだけではなく、患者様の満足度のために味や見た目にこだわった食事を提供できるかどうかも、給食委託会社を選ぶ際に重視しましょう。
3つ目のポイントは、食事の形態にどこまで配慮できるかです。
老人ホームには嚥下能力が低下した方が多いため、食事の形態にどこまで配慮できるかは委託会社を選ぶ際の大きなポイントとなります。
たとえば、刻み食、ソフト食、ミキサー食などの嚥下食は、それぞれ食べやすさや見た目などに違いがあり、メリットデメリットがあります。
もちろん対応している食種が多いに越したことはありませんが、その分手間もかかるため、コストアップにもつながります。
施設にどんな嚥下食が必要かを見定め、その提供ができる給食委託会社を選びましょう。
4つ目のポイントは、給食委託会社の口コミや評判が良いかどうかです。
食事そのものの品質が良いかどうかや、委託会社が良い対応をしているのかなどは、口コミなど評判を見ることが大切です。各企業の公式サイトや口コミサイトなどを通して、確認するようにしましょう。
また、施設の規模や委託する業務などによってどの給食委託会社を選ぶかが変わります。実際に自施設と近い施設の導入事例などを確認して参考にしましょう。
最後のポイントは、実績に定評があるかどうかです。
老人ホームでの食事の提供には、衛生管理や帳票管理などデリケートな内容が絡んできます。そのため、それらをしっかりと把握して管理してくれる給食委託会社でなければ、施設指導監査の際に指摘され、最悪の場合営業停止になるリスクもあります。
そういったリスクを避けるため、どのような施設で導入されているのか、期間や委託内容はどのようなものかなどの実績をしっかりと確認しておきましょう。
老人ホームでは、入居者に時間通りに安全で美味しい食事を提供する必要があるため、スムーズな運営が求められます。
実際に、給食提供をスムーズに運営するためにはどのようなことが必要なのでしょうか?
給食提供をスムーズに運営するためには、施設と給食委託会社との密な連携が必要です。また、施設が理想とする給食の提供を実現するためには双方に柔軟な対応が求められます。
施設での給食運営では、費用やスタッフの負担などコスト面に対する考えと、入居者に対する考えのどちらも必要です。給食費を切り詰め、スタッフの負担を減らせばその分給食の質は下がり、給食の質を上げればその分コストが上がります。
どのように給食を改善し運営していくのかは、施設と委託会社双方の密な連携がなければ実現できません。
給食委託会社を選ぶ場合には、こういった連携や対応面を重視するようにしましょう。
直営でうまく給食が運営できない、委託しているものの思うように給食が改善しない場合、委託会社の導入や変更も検討しましょう。
直営でしか実現できない部分というのも確かにありますが、施設側の人的、時間的コストを削減することで、イベントの開催頻度を上げるなどのメリットも生まれます。
また、給食委託会社はそれぞれ費用や委託できる内容が異なるため、他の給食委託会社に変更することでスムーズに運営できるようになる可能性も十分考えられます。
老人ホームでの給食の提供は、栄養バランスや安全性を担保するのと同時に、入居者の生活の楽しみである必要があります。
給食運営をスムーズにおこなえる環境を構築することで、入居者のことを考えた食事提供ができるようになり、コスト的にも改善することができます。
今回紹介したポイントを意識して、給食運営をスムーズに行えるようアプローチしてみてください。