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2025.08.28

給食の栄養バランスを最適化する実践ガイド|現場の課題解決と施設別対策

「栄養価の基準を満たしつつ、喫食者の嗜好や食事形態にも配慮する」「限られた予算の中で、見た目や味付けのマンネリ化を防ぐ」給食の献立作成に携わるうえで、こうした課題に日々頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、給食現場の栄養士・管理栄養士の皆さんが抱える共通の課題に寄り添い、給食の栄養バランスを最適化するための実践的なヒントを具体的に解説します。

すぐに活用できる具体的な対策を通して、給食が喫食者の方々にとってさらに楽しみなものになるよう、一緒に考えていきましょう。

給食における栄養バランスの基本原則

給食の栄養バランスを整えるには、厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」を活用し、三大栄養素と微量栄養素の管理を意識することが基本です。

さらに、病院や福祉の現場では、疾病や病態に応じた治療食の展開、保育園や学校では都道府県の定める食事摂取基準など、それぞれの施設に応じた栄養管理が必要になります。

ここからは、献立作成の大原則となる食事摂取基準の活用、三大栄養素のバランスと微量栄養素の管理について解説します。

食事摂取基準の活用方法

食事摂取基準を効果的に活用するには、まず厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」の目的と数値の意味を正しく理解することが重要です。この基準は、健康な個人や集団の健康維持・増進を目的とした栄養素の摂取目標を示しており、給食の献立作成における基本指針となります。

年齢や性別、身体活動レベル(PAL)に応じた各栄養素の摂取目標が設定されているため、利用者の特性に応じた栄養管理が可能です。たとえば、同じ高齢者施設でも、車いすの利用者と自立歩行の利用者では、活動レベルの違いにより必要エネルギー量が異なります(一般的に1,600〜2,200kcal/日程度の幅)。

食事摂取基準で個人の必要栄養量を知ったうえで、高齢者施設では咀嚼・嚥下機能に配慮した献立にするなど、利用者の状況を考慮した調整が必要です。

食事摂取基準をベースに、定期的な栄養評価をおこない、残食量や利用者の健康状態をチェックすることで、より効果的な栄養管理を実現できます。

三大栄養素のバランスと微量栄養素の管理

給食の質を高めるには、三大栄養素(たんぱく質・脂質・炭水化物)と鉄・カルシウム・ビタミン類などの微量栄養素の管理が不可欠です。これらの栄養素は単体ではなく、相互に作用するため、献立作成ではその関係性を理解し、組み合わせることが重要です。

たとえば、鉄の吸収を高めるためにビタミンCを含む食品を加えたり、脂溶性ビタミンを効率よく摂るために適度な油脂を用いたりする工夫が挙げられます。

また、野菜の水溶性ビタミンが失われないよう蒸し料理を取り入れるなど、調理技術との連携も大切です。

このように、食材と調味料の組み合わせや調理法を工夫することで、各栄養素を効率的に摂取できます。栄養素のバランスと相互作用を理解した献立作成は、給食の栄養バランスを最適化するための大切な要素となります。

栄養バランスを向上させる3つの工夫

給食の栄養バランスを向上させるには、栄養管理の基本的な理解と施設の特性を考慮した栄養価計算、主食・主菜・副菜の組み合わせ方、旬の食材の活用や調理方法の工夫が求められます。

これらを献立に意識して取り入れることで、利用者の健康を支える美味しい給食が実現するでしょう。

ここからは、栄養バランスを向上させる3つの工夫について具体的に解説します。

ガイドラインに基づく献立作成

給食の栄養バランスを最適化するには、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」に加え、各施設固有の栄養基準や運営方針に沿った献立作成が基本です。

対象者の年齢層や健康状態、活動量によって必要な栄養素は異なるため、施設ごとの特性を反映した献立作成が求められます。

たとえば、高齢者施設では、咀嚼・嚥下機能に配慮した献立作りや、適切な水分補給のための工夫が必要です。保育園や学校給食では、成長期の子どもたちの発育に必要な栄養素を十分に摂取できるよう、献立を組み立てる必要があります。

献立の栄養管理には、献立作成ソフトや栄養計算ソフトを活用し、栄養価を正確に把握しましょう。また、定期的な利用者の栄養評価をおこない、残食量や個人の健康状態を観察しながら、献立内容を改善していくことで、より質の高い給食を提供できます。

ガイドラインを理解し、日々の献立に的確に落とし込む努力が、健康維持や疾病予防につながります。

主食・主菜・副菜の効果的な組み合わせ

栄養バランスの維持には、主食・主菜・副菜の組み合わせが重要です。

主食・主菜・副菜を組み合わせる日本の伝統的な「一汁三菜」スタイルは、栄養バランスの優れた食事パターンとして広く評価されています。

主食・・・炭水化物(米、パン、麺類)

主菜・・・タンパク質(肉、魚、大豆)

副菜・・・ビタミン・ミネラル・食物繊維(野菜、海藻、きのこ類)

汁物・・・水分と栄養素を同時にバランスよく摂取できる

献立ごとに主要な栄養素のパターンを把握することで、週や月ごとの栄養の偏りを減らし、柔軟な献立作成が可能になります。

使用する食材や献立の組み合わせに規則性を持たせることで、栄養バランスが安定し、丼物や麺類、行事食など、栄養バランスが難しい献立でも工夫次第で対応でき、献立のバリエーションも広がります。

主食・主菜・副菜の効果的な組み合わせの理解は、栄養バランスだけでなく、旬の食材や行事に沿ったバリエーションのある、飽きのこない献立作りにつながるでしょう。

旬の食材活用と調理法による栄養価向上

旬の食材は、その時期に最も栄養価が高く、味も優れているため、給食に積極的に取り入れることで栄養面の向上と喫食者の満足度向上を同時に実現できます。また、旬の食材は流通量が多く価格も安定しているため、限られた予算内で質の高い食事を提供しやすくなります。

例えば、冬採りのほうれん草は夏採りと比較してビタミンCが豊富に含まれていることがよく知られるように、旬の食材を積極的に使用することで、食材の持つ栄養をより多く摂取できるでしょう。

さらに、旬の食材を最大限に活かすためには、適切な調理技術を組み合わせることが重要です。ビタミンCを多く含む野菜は加熱時間を短くする、脂溶性ビタミンを含む食材は油を使うなどの調理の工夫で、吸収効率を高めます。

旬の食材と適切な調理技術を組み合わせることで、コストを抑えながら栄養価の高い給食づくりを目指しましょう。

給食現場でよくある課題と解決策

給食現場では、栄養バランスの改善を図る上で「残食の多さ」と「限られた予算」が課題となることがしばしばあります。これらの課題を乗り越えることで、より多くの利用者が満足できる質の高い給食サービスを提供することが可能になるでしょう。

ここからは、これらの課題に対して、現場で実際にできる具体的な解決方法をご紹介します。

栄養基準は満たすが残食が多い

栄養基準を満たした献立でも残食が多い場合、利用者の実際の栄養摂取は不十分ということになります。残食を減らし、必要な栄養を摂ってもらうには、利用者の嗜好やニーズを把握し、栄養価を保ちつつ美味しく仕上げる工夫が必要です。

利用者の嗜好やニーズを把握するには、こまめな嗜好調査が有効です。

アンケートや直接の声かけ、現場スタッフからの聞き取りで、好まれる献立や食べ残しを把握し、味付けや食材の組み合わせ、調理法を見直します。利用者やスタッフとのコミュニケーションは、食事へのポジティブなイメージ付けにもつながります。

また、調理方法の工夫も重要です。

味付けや食材の切り方、盛り付けを調整し、食欲をそそる料理を提供しましょう。たとえば、保育園で野菜が苦手な子どもには、細かく刻んで混ぜるなどの工夫をします。

他にも、イベント食や季節の食材を取り入れることも、食に対する興味を引き出し、残食を減らす効果があります。

利用者の声に耳を傾け、柔軟に献立を改善していくことが、残食問題解決の鍵となります。

限られた予算でも栄養価を上げるコツ

限られた予算の中で栄養バランスに配慮した献立作成をおこなうには、コストパフォーマンスに優れた食材の選定や、調理技術の工夫、メリハリのあるスケジュール管理が重要です。

食材選定では、卵や大豆製品、旬の野菜、缶詰、冷凍食品など、経済的で栄養価の高い食材を献立に組み入れます。また、旬の野菜は皮ごと使用したり、煮汁ごと提供したりすることで栄養ロスも防ぐことができるでしょう。

さらに、同じ食材でも調理法によって満足感や見た目が変わるため、炒め物や和え物など、食べ飽きない工夫も大切です。鶏むね肉や豚こま肉などの手頃な価格の食材も、調理法を工夫することで美味しく提供できます。

他にも、献立のローテーションで食材の偏りを防ぎ、定期的な栄養価計算でバランスをチェックしましょう。計画的な食材の多用途活用や一括調理による効率化は、コストを抑えつつ栄養価を保った献立作成を実現します。

施設別で不足しやすい栄養素と対策

栄養バランスの良い給食を提供するには、「日本人の食事摂取基準」に基づいた献立作成に加え、各施設に設けられている栄養基準や運営方針にも準拠することが大切です。医療機関や介護施設、学校・保育園、社員食堂では、利用者の年齢や健康状態により不足しやすい栄養素があります。

ここからは、それぞれの施設において不足しやすい栄養素を効果的に補給するための対策を解説します。

医療機関での栄養課題と対策

医療機関における食事は、単なる栄養補給ではなく、治療効果を最大化するための重要な要素です。患者さんの病態や治療方針に合わせた個別対応が不可欠であり、これには医師や看護師をはじめとした医療チームとの連携が求められます。

たとえば、糖尿病患者には適切なカロリーコントロールと糖質制限、高血圧患者には減塩食、腎臓病患者にはタンパク質制限など、病状に応じた食事療法が必要です。管理栄養士は、医師や看護師と連携して治療内容や検査データを踏まえた栄養計画を立てます。

また、患者さんの食欲や嚥下状態、嗜好にもきめ細かく配慮することが重要です。食べやすい形態にしたり、見た目や味にも工夫を凝らしたりすることで、治療に専念する患者さんの精神的な支えとなります。適切な栄養は免疫力維持や創傷治癒、薬物療法の効果向上にもつながり、食事を「医療の一部」として機能させることで、より良い治療結果に貢献できるでしょう。

介護・福祉施設での栄養課題と対策

介護・福祉施設では、高齢者特有の低栄養や咀嚼・嚥下機能の低下に対応した栄養管理が求められます。特に、嚥下調整食では形状や食感に配慮する必要があると同時に、十分な栄養価を確保することも重要です。

たとえば、ミキサー食やペースト食は、水分を加えることで栄養濃度が低下しやすいため、少量で高エネルギー・高タンパクな食品の使用や、必要な栄養量を満たす工夫が欠かせません。

また、栄養管理や食べやすさの工夫だけでなく、食事の楽しさを追求することも大切です。季節感を取り入れた献立や、行事食などを提供することで食欲を刺激し、食事への意欲を高めます。

食べやすさと栄養価を両立することで、入居者一人ひとりのQOL(Quality of Life:生活の質)向上と健康維持を実現できます。

入居者の状態を常に把握し、きめ細やかな栄養管理を心がけましょう。

学校・保育園での栄養課題と対策

学校や保育園では、子どもたちの健やかな成長を支えるために、成長期に必要なエネルギーと栄養素の確保が欠かせません。特に鉄分やカルシウムなどの不足しやすい栄養素は、意識的に取り入れましょう。レバーや小松菜、乳製品などを組み合わせ、吸収率を高める調理法を取り入れます。

また、偏食や好き嫌いへの対応も重要な課題となります。子どもが「食べてみたい」と思えるよう、彩りや見た目、味付けに配慮し、給食が楽しい時間になるような演出も効果的です。さらに、食育活動を通じて、食べることの楽しさを伝え、食に対する興味関心を高めることも大切です。

給食を通して、子どもたちがさまざまな食材に触れ、食べる楽しさと必要な栄養を両立させるサポートをしましょう。

社員食堂での栄養課題と対策

社員食堂は、従業員の健康維持と増進をサポートする重要な役割を担っています。現代の食生活では、生活習慣病の予防や、食物繊維・ビタミン・ミネラル不足が課題です。これらを補うバランスの取れた献立が求められます。

これらの課題への対策を献立に反映させるには、旬の食材の活用や、サラダや汁物などの充実、玄米や雑穀米の選択肢導入が効果的です。他にも、健康的な食事を促進するために、メニュー表示で栄養価情報を分かりやすく提示したり、ヘルシーメニューの提供を強化したりするなどの工夫ができます。これらを従業員が柔軟に選択・調整できれば、健康意識の向上にもつながるでしょう。

健康的な食事は、従業員の健康状態を改善し、生産性の向上にも貢献します。企業にとっても、医療費の削減や労働意欲の向上といったメリットをもたらし、結果的に企業全体の活性化が期待できます。

まとめ 

今回は、給食の栄養バランスを最適化するための献立の工夫や、施設ごとの課題と対策について解説しました。

給食の栄養バランスを最適化するには、基準に基づいた献立作成や調理の工夫、施設の特性に応じた対応が欠かせません。課題を正しく捉え、現場で実践できる工夫を積み重ねることで、利用者の満足度向上と健康の両立が実現します。

より質の高い給食を提供し、利用者の健康を支えたいとお考えの施設の皆様、ぜひ一度、弊社にご相談ください。富士産業では、現場の課題解決に向けた最適なサポートをご提案いたします。

著者プロフィール

著者
富士産業株式会社お役立ち記事編集チーム
職業
編集者

病院、介護・福祉施設、保育園・学校、社員食堂など、多様な給食現場での栄養管理や食事提供に携わっています。給食委託サービスのプロフェッショナルとして、栄養バランスを考慮したメニュー開発、コスト管理、オペレーションの効率化、衛生管理などを総合的にサポートしています。