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介護施設の需要が高まる中、高齢者施設における食事の質は入居者の満足度を大きく左右する要素の一つです。
施設生活の中では食事を唯一の楽しみとしている方も多く、食事の満足度は施設全体の満足度に大きく影響するため、正常な施設運営のためには給食の満足度を低下させるわけにはいきません。
この記事では、高齢者施設で人気の高いメニューを中心にした献立を、和食・洋食・中華に分けて紹介するのに加え、食形態別の工夫や季節行事に合わせた特別メニューなどについても幅広く解説します。
老人ホームで人気のメニューは、単に美味しいだけではなく、高齢の方特有のニーズに応える必要があります。
具体的には、食べやすさ、栄養バランス、懐かしさや親しみやすさ、そして見た目の美しさといった要素を満たすことが重要です。加齢に伴う咀嚼・嚥下機能や味覚・嗅覚の変化などが食事の選択に大きく影響するため、これらの身体機能の変化に配慮したメニューが、入居者の食事満足度向上に不可欠です。
老人ホームにおける食事は、栄養補給だけでなく、生活の楽しみや心の安定、交流のきっかけとしても大事な役割を果たします。
味・見た目・雰囲気を含めた「食の体験」は、入居者のQOL(生活の質)を大きく左右する要素となります。食事の時間は入居者同士やスタッフとのコミュニケーションが生まれる機会です。
また、規則正しい食事は、体重や体力の維持、嚥下機能の維持や口腔機能トレーニングの機会にもつながり、心身の健康を支える基盤となります。
高齢者に好まれる食事には主に4つの特徴があります。
①食べやすさ(適切な柔らかさ・一口大サイズ・とろみ活用)
歯茎でつぶせる硬さ、ひと口大カット、汁物やあんの適度なとろみ付けで誤嚥リスクを低減します。
②栄養バランス(必要栄養素の確保)
主菜でたんぱく質を確保し、カルシウム+ビタミンD、食物繊維を計画的に組み合わせます。
③懐かしさ・親しみやすさ(家庭料理・昭和の味付け)
食習慣に寄り添い摂取量を促進します。
④見た目の美しさ(彩り豊かな盛り付け・季節感)
赤・黄・緑の彩りで食欲を刺激します。
老人ホームの食事に人気メニューを取り入れることで、入居者の食事への満足度と食欲を大きく向上させることができます。
食べ慣れた親しみやすい料理が献立に登場することで、入居者は安心感を覚え、食事が楽しみになります。これにより、食事を完食する意欲が高まり、食べ残しの軽減にもつながります。
結果として、必要な栄養をしっかりと摂取できるため、入居者の健康維持に寄与します。
また、美味しい食事は会話のきっかけとなり、他の入居者やスタッフとのコミュニケーションを活性化させることで、生活全体の質(QOL)を高める効果も期待できます。
人気メニューは、入居者の嗜好調査や残食の傾向、スタッフの観察などから判断されます。
嗜好調査(アンケート・聞き取り・家族の声)で定量・定性データを取得し、残食率・喫食時間・摂取量といったデータと突き合わせます。
介護・看護・栄養の多職種の方々が食事中の表情や咀嚼状況を観察し、季節・行事メニューでの反応も評価指標とします。
定例のメニューミーティングで定番候補を検討し、小規模な試食会→改善→本採用というPDCAを回して、施設に合った「人気メニュー」として定着させるやり方があります。
老人ホームで特に人気の高い定番メニューを厳選しました。
高齢者に親しまれる和食、食卓を彩る洋食、そして食欲を刺激する中華の各ジャンルから、おすすめの献立11選を具体的にご紹介します。
和食は、高齢の方にとって最も親しみやすいメニューであることに加え、一汁三菜を守ることで栄養バランスを整えやすいというメリットもあります。
また、味の想像がつきやすいため、認知症の方でも手が伸びやすいメニューでもあります。
実際に、和食系の人気の献立にはどんなものがあるでしょうか?メインとなるメニューと、一緒に組み合わせたい献立について紹介します。
肉じゃがは、古くから日本の家庭で親しまれてきた定番料理で、その優しい味わいと加熱により食材を柔らかく仕上げられる特性から、高齢者施設でも人気の高いメニューです。
献立構成例
主菜:肉じゃが
副菜:小松菜の胡麻和え
副菜:白菜の和風煮
主食:白米
汁物:わかめと豆腐の味噌汁
じゃがいもは比較的カロリーが高く、摂取量が少ない方でも少量でカロリーを摂れるおすすめの食材です。
加えて、肉を薄切りにしたり、煮汁に少しとろみをつけたりすることで、咀嚼や嚥下に不安がある方でも安全に、そして美味しく召し上がっていただける可能性が広がります。
筑前煮も、肉じゃが同様に高齢の方に人気の高いメニューです。
多くの種類の野菜を摂取でき、鶏肉を使うことでさっぱりと食べられることから、特に野菜好きの方に人気のメニューです。
献立構成例
主菜:筑前煮
副菜:もやしの酢の物
副菜:きゅうりの塩昆布和え
主食:白米
汁物:しじみの味噌汁
筑前煮は、もやしやきゅうりのようにさっぱりとした副菜と組み合わせることで、全体のバランスが取れ、最後まで飽きずに食べやすくなります。
調理の工夫として、れんこんやにんじんなど、繊維質で硬い食材も含まれます。そのため、高齢者が安全に、そして無理なく食べられるよう、芯までしっかりと柔らかく煮込むことや、咀嚼しやすい一口大にカットするなどの調理上の工夫が大切です。
高齢の方は、こういった硬いメニューを提供すると、噛むことに体力を使い摂取量が落ちてしまう可能性もあるため、さっぱりとしたメニューとの組み合わせで食べやすいように工夫してあげるのが効果的です。
魚の煮付けは、肉よりも魚を食べる習慣のある高齢の方に人気のメニューです。また、煮ることで身が柔らかくなるため、焼き魚に比べて食べやすい点も人気の理由です。
献立構成例
主菜:カレイの煮付け
副菜:ほうれん草のお浸し
副菜:かぶの煮物
主食:白米
汁物:大根と油揚げの味噌汁
魚には、EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸と呼ばれる栄養素が豊富に含まれており、血液をさらさらに保ち動脈硬化の予防に効果的です。健康維持のためにも積極的に摂取したい食材です。
また、魚の煮付けは、カレイ・さば・ぶりなど魚種を変えたり、生姜醤油・味噌ベース・甘辛など味付けを工夫するだけで簡単にメニューのバリエーションを広げることができます。食べやすく栄養価に優れ、献立への組み込みやすさから、多くの施設で定期的に提供される人気の定番メニューです。
茶碗蒸しは、なめらかで食べやすく、具材のアレンジもしやすい定番メニューです。
献立構成例
主菜:焼き魚
副菜:茶碗蒸し(海老、鶏肉、しいたけ入り)
副菜:大根の甘酢和え
主食:白米
汁物:あさりの味噌汁
茶碗蒸しには、海老や鶏肉、しいたけ、ぎんなん、かまぼこなど様々な食材を取り入れることでバリエーションを増やしやすいメニューです。栄養面では、卵でたんぱく質を、具材でビタミン・ミネラルを追加できます。
調理の工夫として、具材は小さく柔らかくし、誤嚥を防ぐため、銀杏など硬い具は状態に応じて調整します。また、卵液を丁寧に濾してなめらかに仕上げ、蒸し時間を調整して適度な固さにできます。だしにとろみをつけてあんかけにすることで、水分でむせやすい方でも安全に召し上がってもらうことができます。
洋食献立は、食感のバリエーションと見た目の華やかさで食事の楽しみを広げることができます。
昭和世代が青春時代に親しんだ洋食の味は、特別感のある食事として喜ばれます。クリーミーなソースやとろみのある料理は嚥下しやすく、高齢者にも安全に提供できる工夫が施しやすいジャンルです。
老人ホームで人気の洋食の献立とその理由や特徴を紹介します。
子供から高齢の方まで幅広く愛される定番メニューで、老人ホームでも人気のメニューです。
ハンバーグは、ひき肉を材料にしているため均質で食べやすく、豆腐を入れることでより柔らかくしたり、野菜を入れて栄養価を高めたりと工夫しやすいメニューです。
また、豚ひき肉にはたんぱく質やビタミンB1、野菜類には様々なビタミン類が豊富に含まれている点もおすすめのポイントです。
献立構成例
主菜:デミグラスソースハンバーグ
副菜1:コールスローサラダ
副菜2:温野菜(ブロッコリー、人参)
主食:ライス
汁物:コンソメスープ
パンチのある主菜に対して、副菜は温野菜などシンプルな野菜類を添えることがおすすめです。
調理の工夫として、肉100%ではなく豆腐ハンバーグにしたり、卵やパン粉をつなぎに用いたりして、柔らかく仕上げることがポイントです。加熱しすぎると硬くなるため、適切な温度管理で仕上げます。
グラタンは、クリーミーで温かく、見た目も華やかで人気のメニューです。
普段牛乳を飲まない方にとっては良いカルシウムの供給源にもなり、特に寒い時期に取り入れたいメニューです。
献立構成例
主菜:海老とマカロニのグラタン
副菜1:フレンチサラダ
副菜2:蒸し野菜
主食:パン
汁物:オニオンスープ
栄養面では小麦粉や牛乳、マカロニ、チーズなどを使用するため、比較的高カロリーのメニューで、食事量が少ない方や栄養摂取量が不足しがちな方にとって効率的なエネルギー補給源となります。
また、高齢の方は体感温度が低く感じやすい傾向があるため、温かいグラタンは心理的な安心感や満足感をもたらし、食欲増進にもつながります。
ポタージュは、野菜の栄養を効率的に摂取でき、他の汁物に比べて飲みやすく、人気のメニューです。コーンやじゃがいも、かぼちゃなど、様々な野菜を丸ごとミキサーにかけて作られるため、ビタミンやミネラル、食物繊維といった野菜の栄養素を余すことなく摂取できます。
献立構成例
主菜:白身魚のムニエル
副菜1:グリーンサラダ
副菜2:フルーツゼリー
主食:ロールパン
汁物:コーンポタージュスープ
ポタージュ自体に満足感があるため、献立を立てる際は、ボリュームのある主菜との組み合わせを避け、バランスを考慮することが重要です。
献立例のように、副菜の一つをデザートに変え、ボリュームを減らすことも効果的です。
ポタージュは味噌汁やコンソメスープよりもとろみがあり、テクスチャーが重たいため、普段水分にとろみをつけている方でもそのまま飲める可能性があります。そのため、イベント食などで常食に近い形の食事を提供したい場合にも適しています。
オムレツは、ふんわりとした均質で食べやすく、中に入れる具材やソースによって多彩なバリエーションを展開できる人気のメニューです。
オムレツの材料となる卵は、たんぱく質やビタミンなどを豊富に含む栄養価の高い食材で、オムレツにすることで野菜やお肉などを中に入れてさらに栄養価を高めることができます。
献立構成例
主菜:野菜オムレツ
副菜1:ポテトサラダ
副菜2:チキンとほうれん草のソテー
主食:トースト
汁物:ミネストローネスープ
調理の工夫として、具材は細かく加熱済みにし、卵は半熟を避けしっかりと火を通します。とろみのあるトマトソースなどを添えることで嚥下補助にもつながります。
オムレツは火加減と手早さが求められるため、大量調理には不向きな側面もありますが、入居者数が少ない施設や、人手をかけられるイベント時には特別感を演出できます。
また、すでに完成している業務用製品を活用することも、効率的な献立導入の有効な手段です。
中華献立は、味のメリハリがあり味覚が低下した高齢者の食欲増進に効果的です。ボリューム感も満足度につながるため、食欲不振の方にも喜ばれるジャンルです。
しかし、油分や塩分が多くなりがちなため、高齢者向けの調理配慮が特に重要になります。ここでは、老人ホームで人気の高い中華メニューを紹介します。
中華丼は、とろみ餡で飲み込みやすく、具だくさんで満足度が高い人気のメニューです。豚肉、エビ、白菜、もやし、にんじんなど豊富な食材を用いて作られるため、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどを効率的に摂取できます。
献立構成例
主菜・主食:中華丼
副菜1:春雨サラダ
副菜2:杏仁豆腐
汁物:わかめスープ
中華丼はボリューム感があるため、さっぱりとした副菜と組み合わせることで、最後まで美味しく召し上がっていただけます。
調理の工夫として、油は控えめにし、塩分はだしや香味野菜で補うことで、高齢者に適した味付けにします。具材はやわらかめのカットにしつつ、あんかけで食べやすいため、野菜の加熱時間を調整して食感を少し残すことで、飽きのこない食べ応えを演出することも可能です。
餃子は、手作り感と食べ応えで人気のメニューです。家庭で餃子を包んだ経験を持つ高齢の方も多いため、懐かしさや親しみやすさを感じてもらいやすいメニューです。
また、餃子の皮はボリュームがあるため、メニューとしての満足感もあり人気です。
加えて、レクリエーションとして包む工程を入居者と一緒に行うという工夫もできます。
献立構成例
主菜:焼き餃子
副菜1:中華風コーンサラダ
副菜2:中華風ピクルス
主食:ライス
汁物:豆腐と卵のスープ
餃子は、皮の小麦粉から炭水化物、餡の肉からたんぱく質、野菜からビタミンや食物繊維を摂取でき、一品でバランス良く栄養が摂れるメニューです。特に、普段はお米をあまり食べないという入居者は、餃子を食べることで手軽に炭水化物を摂取できます。
一方で、焼く際の油の使用量や、餡の味付けが濃すぎると、脂質過多や塩分過多につながる可能性があります。油は控えめに、味付けはだしや香辛料で風味を活かす工夫が求められます。また、食べやすいように、焼き餃子ではなく水餃子にするのも有効な方法です。
春巻きは、施設の食事では珍しいパリパリの食感と、具材の多様さから人気の高いメニューです。
豚肉からたんぱく質を、野菜からはビタミンや食物繊維を摂取でき、栄養バランスも良好です。中身の具材は、野菜やお肉、たけのこなど、好みに合わせて調整できるため、様々なバリエーションを楽しめます。
献立構成例
主菜:野菜春巻き
副菜1:バンバンジーサラダ
副菜2:マンゴープリン
主食:炒飯
汁物:中華風卵スープ
春巻きのパリパリの食感は咀嚼・嚥下機能が低下した方にとっては食べにくい場合があります。そのため、そのまま提供するのではなく、食べやすいように工夫が必要です。
具体的には、提供前に一口大にカットしたり、軽く潰して提供することで、安全に食べることができます。また、春巻きの具材を一度あんかけにして包むことで、より安全に食べていただくことができます。
老人ホームにおける季節行事に合わせた特別メニューは、入居者の生活満足度を高める重要な要素です。
日常の中で季節感を味わう機会が少ない老人ホームでの生活にとって、普段とは異なる特別な食事は、食欲を増進させるだけでなく、入居者同士やスタッフとの会話を促し、コミュニケーションを活性化させます。
ここでは年間を通して老人ホームの食事イベントに活用できる、季節行事食の具体的な例をご紹介します。
1月:お正月料理
・雑煮(安全のためもちムース推奨)
・おせち料理(見た目の華やかさはもちろん、食べやすさも重要)
2月:節分・バレンタイン
・恵方巻き(食べやすくカットして提供)
・いわしの梅煮
・福豆(軟らかく煮た大豆)
・チョコレートケーキ
3月:ひな祭り
・ちらし寿司
・蛤のお吸い物
・菜の花のお浸し
・桜餅(提供可能かどうかの確認必須)
4月:お花見
・花見弁当風献立
・桜ご飯
・春野菜の天ぷら(カットもしくは柔らかい野菜のみの提供などを検討)
・三色団子(提供可能かどうかの確認必須)
5月:端午の節句
・ちまき
・柏餅(提供可能かどうかの確認必須)
・筍ご飯
6月:父の日・初夏
・鮎の塩焼き(骨抜き)
・おろしハンバーグ(梅雨を乗り越えるためのさっぱりメニュー)
7月:七夕・土用丑の日
・七夕そうめん
・うな重
・星型ゼリー
8月:夏祭り・お盆
・夏野菜カレー
・かき氷
・夏祭り気分の屋台風メニュー(焼きそば、フランクフルトなど)
9月:敬老の日・お月見
・赤飯
・秋刀魚の塩焼き
・月見団子(提供可能かどうかの確認必須)
・さつまいもごはん
10月:運動会・ハロウィン
・秋鮭のちゃんちゃん焼き
・かぼちゃのプリン
・栗ご飯
11月:紅葉狩り
・紅葉を意識した暖色の彩り献立
・きのこ尽くしメニュー
12月:クリスマス・年越し
・クリスマスケーキ
・ローストチキン
・年越しそば
・冬至のかぼちゃ料理
介護施設では、常食の提供のみならず、軟菜食、ソフト食、刻み食、ミキサー食など、入居者の身体機能に合わせた様々な形態の食事を提供することが求められます。
単に常食を刻んだりミキサーにかけるだけでは、安全性や美味しさが損なわれることがあります。安全性を確保しながら、各食形態で人気のメニューを美味しく提供するためには、どのような工夫が必要になるのでしょうか。
軟菜食は、常食では繊維が多かったり硬かったりして食べにくいと感じる方向けに提供される食事形態です。
主な特徴は、繊維が多い根菜や葉物野菜の茎などを取り除いたり、加熱や酵素処理により柔らかくしている点です。
軟菜食の調理では、特定の食材のみを別途調理する必要があるため、常食に比べて手間がかかります。しかし、食事の見た目を常食と大きく変えないことが重要で、煮崩れなどによる見た目の変化にも気を配らなければいけません。
特に、行事食などの場合は可能な限り見た目や食材はそのままに調理を行う必要があります。
調理技術が求められますが、安全かつ美味しい軟菜食を提供することは、入居者の満足度向上に直結します。
ミキサー食は、咀嚼力や嚥下機能が低下した方向けに、食材をだしなどで伸ばしてミキサーにかけた食事です。
基本的には噛まずに飲み込むことができ、安全性が高いですが、食事の見た目は常食と大きく異なるため、見た目の違いによる喫食量の低下につながりやすいというデメリットもあります。そのため、赤・黄・緑などの色味を取り入れたり、香りや味が薄まらないような工夫をしたりすることが大事です。
ミキサー食はサラサラとした均質なものと、柔らかい粒が残るものに分けられ、食品の伸ばし具合やミキサーにかける時間などによって調整できます。
見た目の課題はありますが、常食と同じ食材を使えるため、安全に栄養を摂取できる重要な形態です。
ソフト食やムース食は、ミキサー食よりも一段階進んだ食形態で、豆腐のように「歯がなくても噛める形のある食事」を指します。これらは、一度食材をミキサーにかけた後、加熱し、ゼラチンや専用のゲル化剤などを用いて柔らかく固め直して作られます。
この調理法により、ミキサー食では難しかった「形」の再現が可能になり、例えば、ミキサーにかけた鮭を焼き魚の切り身の形に成形するなど、見た目を常食に近づける工夫ができます。これにより、嚥下機能に配慮しながらも、入居者の方々に「目で見て美味しい」という食の楽しみを提供し、食事の満足度を大きく高めることが期待できます。
しかし、ソフト食・ムース食の提供には、高い技術と手間が必要です。
例えば、
・加熱不足で固まらない
・思った形に成形できない
・固まりすぎて適した形態ではない
・調理により味が変わってしまう
など、ソフト食の調理には難しい点が多々あります。
特に、介護施設や病院などでは、ソフト食だけでも一度に何十食と提供を行うため、クオリティを保つことは困難です。
このように高度な専門性が求められるソフト食・ムース食の提供において、安定した品質と美味しさを両立させるには、専門的なノウハウを持つ給食会社への委託が有効な選択肢となります。富士産業では、専門の知識と経験豊富なスタッフにより、安心で高品質な給食提供が可能です。
栄養基準を満たしながら入居者に喜ばれるメニューを提供するためには、定期的な嗜好調査や最適なメニューローテーションなどが不可欠です。
入居者のニーズを正確に把握し、飽きのこない魅力的な献立を提供することで、食事の満足度を向上させることができます。
ここでは、その必要性と内容について解説します。
入居者の食事満足度を高めるためには、定期的な嗜好調査が必要です。
嗜好調査は、入居者の食事の好き嫌いや、量や硬さ、見た目などの評価を確認するもので、アンケート方式で回答していただくものが多いです。食事への要望を自由記述してもらうなど、調査の目的によってフォーマットはさまざまです。
回答が集まったら、それぞれの項目を集計して表やグラフにまとめ、給食の課題を洗い出します。
特に、食形態や衛生管理における課題が明確になった場合は、事故防止のために対応する必要があります。厨房のみならず施設全体に結果を公表し、課題の解決に努めます。
施設の運営上改善できない場合もありますが、可能な限り対応を行うことで、入居者の満足度向上につなげることができます。
嗜好調査で入居者の嗜好や課題が明確になったら、メニューローテーションの最適化につなげましょう。
例えば
・人気のメニューはローテーションに多く組み込み、提供頻度を上げる
・不人気のメニューはローテーションから外し、提供を少なくする
といった対応をとれば、入居者の満足度向上につながります。
ただし、栄養バランスが偏ったり、メニューのバリエーションが減っては意味がないので、嗜好調査の結果を反映させすぎるのは逆効果です。
同じメニューの提供頻度は最大でも2週間に1回程度にしましょう。
メニューに組み込む場合は、
・フロアでの食事レクの実施が少ない夕食時
・家族の面会が少ない平日
に入れるなど、入居者が施設の食事をより楽しんでいただける可能性が高い日を選びましょう。
それにより、入居者は人気メニューの日に施設の食事を楽しみ、特別なイベント時にはそちらの食事を堪能するといった柔軟な対応も可能になります。
老人ホームで好まれるメニューとその特徴について紹介してきました。
老人ホームの入居者は、美味しい食事を求めているのと同時に、安全で食べやすい食事を求めています。
嗜好調査を基にしたメニュー改善と、個々の状態に合わせた味付けや食形態での提供は、入居者全体の満足度向上に直結します。
しかし、美味しさと安全性を両立した食事を365日、1日3食継続して提供することは、多くの施設にとって大きな課題となります。
給食運営に課題を抱えている施設様は、給食委託サービスの導入や業者変更を検討することで、専門的なノウハウを活用し、食事サービスの質を向上させることが可能です。