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学校給食は、子どもたちがバランスの良い食事をとり、健康的な成長を支える場であるとともに、食文化やマナーを学ぶ「食育」の場でもあります。
しかし、限られた時間と予算の中で、美味しさ・栄養バランス・安全性を担保することは難しく、栄養教諭をはじめとする学校関係者の工夫が欠かせません。
この記事では、給食会社の視点から、学校給食で特に人気の高いメニューを「定番」「野菜たっぷり」「世界の食文化」「季節・行事食」の4つのカテゴリに分けて紹介します。
また、現場の栄養士さんに向けた献立作成のポイントや、給食運営者の方に向けた業務委託の可能性についても解説します。

学校給食の人気メニューには、長く愛されてきた定番のものから、新しい味覚を学べるメニューまで幅広く存在します。
残食調査やアンケートなどを考慮し、つい食べ慣れている定番メニューに偏った献立を作ってしまいがちですが、学校給食は家庭では食べることが少ないメニューや食材に触れる大事な機会でもあります。
ここでは、学校給食で実際に提供されることの多いメニューや、食育の観点から優れているメニューを、4つのカテゴリーに分けて紹介します。
また、人気の理由や栄養素的なねらい、調理のポイントなども解説します。
学校給食の目的の一つは、子どもたちにしっかりと食べてもらい、健やかな成長につなげることです。
そのためには、栄養バランスの観点だけではなく、子どもに人気のメニューを献立に組み込むことが重要です。
実際に、学校給食で定番となっている子どもに人気のメニューとして、以下のものがあります。
献立例
・主食・主菜:野菜たっぷりポークカレー(甘口)
・副菜:キャベツとコーンのサラダ
・汁物:オニオンスープ
カレーライスは、香りが食欲を引き立て、とろみがあって食べやすいメニューです。
具材のカットサイズを変更することで学年に応じた食材の形態調整も可能であり、全年齢層に受け入れられやすい一品です。
カレーは野菜の主張をおさえたメニューであるため、野菜嫌いの子どもでも食べやすいメリットもあります。
他にも、カレーの具材としてよく使用されるじゃがいもはエネルギー比率が高く、少量でもエネルギーを摂取することができます。
また、にんじんや玉ねぎの食物繊維やビタミン、肉のたんぱく質など、体に必要な栄養素が1つにまとまっているという特徴もあります。甘口にすることで子どもでも食べやすい味付けにできる上、高学年の場合は少し辛味や香りを強くするなどの工夫も難しくありません。
献立例
・主食:ごはん
・主菜:豚肉の生姜焼き
・副菜:ほうれん草のおひたし
・汁物:豆腐とわかめの味噌汁
生姜焼きは、香ばしいしょうがの香りと甘辛い味付けでご飯が進むメニューとして人気ですが、生姜の香りが強いため、特に中高学年に人気があります。
生姜を始めとした薬味類は苦手な子どもも多いため、使用量には注意が必要ですが、「香りや風味を楽しむ」という食育にもうってつけのメニューです。
また、豚肉にはたんぱく質やエネルギー代謝を助けるビタミンB1が豊富に含まれているため、成長期の子どもにはぜひ取り入れてほしい食材の一つです。
調理をする際は、脂身を取り除いて子どもでも食べやすい形にしたり、薄切りにしたりして加熱のむらを防ぐことが重要です。味付けも、生姜と醤油ばかりではなく、みりんや砂糖も使い甘辛い味に仕上げたほうが、子ども受けする傾向があります。
献立例
・主食:ごはん
・主菜:鶏の唐揚げ
・副菜:キャベツとハムの和風サラダ
・汁物:大根の味噌汁
鶏肉の唐揚げは、衣のサクッとした食感とジューシーな肉質が人気で、子どもたちが楽しみにしているメニューの代表格です。ベースとなる唐揚げに味付けを加えたり、大根おろしを乗せたりすることでアレンジが効くため、調理の現場としてもありがたいメニューの一つです。
鶏肉はたんぱく質を豊富に含む食材であり、筋肉や皮膚の発達に重要な役割を果たします。また、揚げることで脂質を豊富に含むようになるため、エネルギー比率が高くなるというメリットもあります。大人にとっては「高カロリーのメニュー」というイメージも強いですが、成長期の子どもが効率的にエネルギー補給するためのメニューとしては有用です。
ただし、栄養素がたんぱく質と脂質に偏ったメニューでもあるため、副菜や汁物に野菜や果物を活用しビタミンやミネラルを補うことで、よりバランスの取れた献立になります。
調理をする際は、子どもが食べやすいように皮と余分な脂を取り除く、脂身の少ない胸肉を使うのもおすすめです。大きくカットするとボリューム感は演出できますが、中心まで加熱できない可能性もあるため、中心温度の測定は特に注意して行いましょう。
学校給食では、食べる量を確保するだけでなく、栄養バランスが整っていることも求められます。
特に、摂取量が少なくなりがちなのが野菜類であり、野菜嫌いな子どもたちにも配慮した献立の作成が必要です。子どもたちが積極的に手を伸ばし、進んで食べられるような人気メニューにはどのようなものがあるのでしょうか?
献立例
・主食:ごはん
・主菜:肉じゃが
・副菜:小松菜のしらす和え
・汁物:豆腐と大根の味噌汁
和食の代表格でもある肉じゃがは、家庭的で親しみやすく、甘辛い味付けと柔らかい食感で子どもにも人気です。じゃがいものボリューム感と、肉の満足感でごはんのおかずとしても人気が高いメニューです。
栄養面では、じゃがいもからエネルギー、肉からたんぱく質、野菜からビタミンと、幅広い栄養素を摂取できます。肉じゃがにほとんど含まれていないカルシウムなどは、小松菜やしらすなどの小魚や牛乳を組み合わせることで補填できるため、献立が立てやすいというメリットもあります。
調理をする際は、面取りをして煮崩れを防止したり、だしを利かせて薄めの味でも深い味わいにしたり、具材の大きさを調整することで学年ごとに適した形にしたりすることが効果的です。
献立例
・主食:ごはん
・主菜:八宝菜
・副菜:春雨サラダ
・汁物:中華スープ
八宝菜は、他のメニューと比較して具材の種類が多く、彩りも良いことから人気のメニューです。とろみがあることで食べやすく、普段野菜を嫌がる子どもにも好まれる傾向があります。
栄養面では、エビや豚肉のたんぱく質、白菜やにんじんなどの食物繊維、各野菜のビタミンやミネラルがバランス良く含まれているため、ぜひ食べてほしいメニューの一つです。
調理する際は、様々な食感を演出できるように、具材を入れるタイミングを調整して加熱するようにしましょう。また、油を使いすぎないようにすることで、食べやすい味につながります。
献立例
・主食:ロールパン
・主菜:白身魚のムニエル
・副菜:マカロニサラダ
・汁物:ミネストローネ
ミネストローネは、トマトの酸味と野菜の甘みがバランスよく、子どもにも受け入れられやすいメニューです。汁物にミネストローネを採用することで、味噌汁やコンソメスープよりも豪華さが増し、献立全体のクオリティを一段引き上げてくれるメリットもあります。
トマトにはビタミンCなどの代謝を助ける栄養素が豊富に含まれているため、成長期の子どもにぜひ食べてほしい食材です。
調理する際は、にんじんや玉ねぎは食感がなくなるまで柔らかく加熱するなど、低学年の子どもでも食べやすい形態にすることが重要です。高学年のレシピには、バジルやセロリといった香りがある材料を少し入れてみるのもおすすめです。
学校給食の目的の一つに「食育」があります。
幅広いメニュー、食材を食べてもらい、食事や文化にふれることも重要な教育の一環です。
栄養面だけでなく、異なる国や地域の料理を体験できることは、子どもたちにとって貴重な学びの機会となります。
世界の食文化に親しみつつ、子どもたちに人気のメニューにはどのようなものがあるのでしょうか?
献立例
・主食・主菜:タコライス
・副菜:コーンスープ
・デザート:パインゼリー
タコライスは、メキシコ料理のタコスの具材をご飯に載せたアレンジメニューで、沖縄県が発祥と言われています。
チリパウダーやアボカド、サルサソースといった日本食では見かけない食材が豊富に使用されているため、世界の食に興味をもつきっかけになるのに加え、献立のアクセントにもおすすめのメニューです。
栄養面では、炭水化物(ごはん)とたんぱく質(ひき肉)、ビタミン豊富な野菜が同時に摂れるバランスの良いメニューであるため、一食に必要な栄養素の大部分を賄うことができます。
チリパウダーやサルサソースには、唐辛子やコリアンダーなどのスパイスが含まれているため、辛さや風味には注意が必要です。野菜類は小さくカットすることで、子どもでも食べやすい形態に変えることができます。
献立例
・主食:ナン
・主菜:チキンカレー
・副菜:ほうれん草のソテー
日本ではカレーをご飯と共に食べるのが一般的ですが、ナンと食べることで本場のカレー料理への理解が深まります。
カレーそのものが子ども人気が高いため、ナンを組み合わせても喫食量が確保できる上、本場の料理と普段自分たちが食べている料理の違い、文化的な背景についても学べるメニューです。
栄養面でも肉や野菜が豊富に含まれているため、栄養バランスが整っています。調理をする際は辛味をおさえる、本場に近づけすぎて香りを立たせ過ぎないようにするなどの注意が必要です。
献立例
・主食・主菜:ガパオライス
・副菜:春雨サラダ
・汁物:野菜スープ
ガパオライスは、ひき肉や野菜、バジルなどを炒めて作るタイの料理です。ナンプラーやバジルを使っているため、新しい味覚体験ができるメニューとしても人気です。
見た目はひき肉ご飯に近いため、子どもが手を伸ばすハードルも低く、海外の文化や料理に興味を持つきっかけになりやすいというメリットもあります。
栄養面では、鶏ひき肉からたんぱく質を効率よく摂取でき、バジルの香りで食欲増進効果が期待できます。
調理の際は、食べやすいように辛味を控えめにしたり、独特の風味をもつナンプラーを一部醤油に置き換えたりして、食べやすく工夫するのがおすすめです。バジルも、使いすぎると風味が立ちすぎるため注意が必要です。
食育の一環でもある学校給食では、日本の文化や食事を知ることも重要な目的の一つです。
日本には四季があり、全国各地で様々な食文化が成熟しています。そのため、季節や地域ごとに異なる料理を知ることは、食育として非常に重要な意味を持ちます。
こういった行事食を提供する際には、POPなどを用いて行事の意味も同時に説明することで、より効果的に食育を行うことができます。
実際に、学校給食で行事食として扱われているメニューにはどのようなものがあるでしょうか?
献立例
・主食:三色ちらし寿司
・副菜:菜の花のおひたし
・汁物:紅白麩と三つ葉のお吸い物
・デザート:いちご
ちらし寿司は、女の子の成長を願うひな祭りで提供されるメニューで、色鮮やかで行事の雰囲気を感じられることで人気です。
ちらし寿司の具材には、それぞれエビ(長寿)、れんこん(将来の見通し)、豆(健康でマメに働く)、錦糸卵(財宝が貯まる)、にんじん(根をはる=安定)などの意味が込められており、そういった考え方を学ぶきっかけにもなります。
調理の際は、酢を控えめにしたり、甘めにしたりすることで子ども向けの味付けとなり食べやすくすることができます。
献立例
・主食:恵方巻き
・汁物:けんちん汁
・デザート:みかん
節分が近くなるとコンビニやスーパーで見かけることが多い恵方巻きも、人気の行事食の一つです。
恵方巻きは普段のメニューと異なり、自分で手に取って食べられる体験型のメニューであるため、より行事を理解してもらうことにつながります。
栄養面では、ご飯の炭水化物、魚や卵のたんぱく質、野菜のビタミンなどを同時に摂取できる、意外にも栄養バランスに優れたメニューでもあります。
調理の際は、具材を豊富に取り入れて彩りを良くしたり、野菜を細くカットしたりすることで子どもにも食べやすいメニューにすることができます。
手作りするには手間のかかるメニューであるため、出来合いのものを活用することも考える必要があります。こういった手間のかかるイベント食も高いクオリティで提供したいという場合は、給食委託会社に委託してみるのも一つの選択肢となります。
献立例
・主食:ごはん
・主菜:かぼちゃのそぼろ煮
・副菜:白菜のおひたし
・汁物:けんちん汁
かぼちゃは、冬至という日本の風習を感じることができるメニューです。
ひな祭りや節分と比べるとイメージが薄い冬至ですが、大きなイベントばかりではなく、こういった季節の移り変わりを体験することや、旬の食材を活用することを学ぶ良い機会でもあります。
栄養面では、かぼちゃはビタミンや食物繊維が豊富に含まれており、栄養価が高いため、子どもにもぜひ食べてほしい食材の一つです。
調理の際には、安全に食べられるようにしっかり加熱することや、蒸して自然な甘味を活かす工夫が必要です。加熱に時間がかかるため、冷凍かぼちゃなど一度火が入っているものを活用することも効率的でおすすめです。

ここまで学校給食におすすめのメニューとそのポイントについて紹介してきましたが、学校給食を支えているのは、給食の設計図となる献立です。
子どもたちに、栄養バランスの取れた、美味しい食事を食べてもらい、心身の成長や教育を支える場とするためには、献立の作成と提供において、以下の3つのポイントが重要になります。
学校給食は、成長期の子どもの正常な発育を支える非常に重要な役割を担っています。
そのため、「学校給食摂取基準」に基づいた、児童生徒の発達段階に合わせた栄養設計が必要になります。特に、5大栄養素の補給はもちろん、不足しがちなカルシウムや鉄分などの栄養素を補給できるような献立作成が求められます。
また、栄養バランスを1食あたり、1日あたりで適正化しようと思うと、使用できる食材も限られるため、週・月単位で平均化を図ることを念頭に献立作成を行う必要があります。そうすることで、様々な食材を使い、バリエーション豊かなメニューを提供できるようになります。
学校給食は、まだ免疫機能が成熟しきっていない子どもたちに提供を行うため、食材の選定から提供までの一連のプロセスで徹底した安全・衛生管理が必要になります。
そのため、学校給食では、納品時の食材のチェックから、各調理工程での汚染・異物混入の防止、アレルギー対策や温度管理など、高いレベルでの安全な食事管理が常に求められています。
特に、卵・乳・小麦など子どもに多いアレルギーへの対策は必須です。
重度のアレルギーを持つ子どもが誤ってアレルゲンを口にすると、生命に関わる危険があるため、徹底した管理が求められます。
学校給食は、旬の食材や行事食を取り入れ、掲示や給食指導を通して「食への関心」を高めることも重要な目的の一つです。
他にも、食べ物を大切にする気持ちや地域食文化の理解を深めることも学校給食の目的であるため、「食べ物を残さないように」という声かけや、地域ならではの食材の活用も食育の一環として考えられています。
海外の料理を通じて文化を学んだり、様々なことに興味を持つきっかけにすることも食育の目的の一つであるため、学校給食では人気のメニューばかりでなく、柔軟な発想で様々なメニューを提供することが求められています。

学校給食では、献立作成から調理、栄養管理、衛生管理に至るまで多くの人手と専門知識を必要とするため、委託化によって業務の効率化や職員の軽減を図りつつ、子どもたちに提供する給食の質と安全性の向上を実現できる可能性があります。
実際に、学校給食の運営を委託することでどのようなメリットがあるでしょうか?
給食運営のプロセスには、給食の調理、提供だけではなく、調理スタッフの管理も含まれます。そのため、委託会社に依頼することで、調理員採用などの負担を軽減できます。
また、欠員時の人員補充や研修も委託先で対応可能なため、安定した運営が期待できます。
採用や教育、人事管理などは負担の大きい業務であるのに加え、どの程度の負担なのかを評価することが難しいため、委託することで予想以上の業務負担の軽減効果を得られる可能性もあります。
委託契約の内容によっては、食育イベントや掲示物の作成支援、児童への食育指導など、専門スタッフによるサポートを受けられる場合があります。
管理栄養士の採用が難しい自治体などでは、学校現場と委託会社が協働することで、より効果的な食育活動を実現できる可能性があります。
食育は、食事を提供するだけでは達成できず、食材の選び方や栄養素の働き、食事マナーなどを伝えて初めて食育と言えます。そういった子どもの教育環境を整えるために給食運営を委託するという視点も必要です。
委託会社を導入することで、衛生管理による食中毒や感染症の予防を行えるというメリットもあります。
委託会社はHACCP(※)対応の衛生マニュアルを整備しており、食中毒や感染症のリスクを最小限に抑える体制を整えています。また、長年の実績と専門的ノウハウにより、安全・安心な給食提供が可能です。
学校給食の運営を脅かす大きな原因が食中毒や異物混入などのトラブルであるため、安定した給食運営を行うためには、外部委託も選択肢の1つになります。
※HACCP = Hazard Analysis and Critical Control Point(危害要因分析重要管理点)の頭文字を取った国際的な食品衛生管理の手法
学校給食は、単なる栄養補給だけでなく、子どもたちの食文化やマナーといった「食の学び」を支える教育の場としても重要な役割を担っています。
人気メニューの工夫と安全・栄養・食育の3本柱を意識することで、より豊かな給食時間を実現できます。
さらに、委託導入により運営体制を強化することで、教育現場の負担軽減と学校給食の質の向上を両立できる可能性があります。
今回紹介したメニューを普段の献立に取り入れつつ、ぜひ学校給食運営について今一度考えるきっかけにしてみてください。